2012年 02月 12日
2012年2月 白雨館ゼミ |
今年最初の白雨館ゼミは、学生にとってとても興味深いテーマ「悪条件の美学」でした。
■2011年度卒業設計・制作の評価
まずその前に、今年のランドスケープデザインコース4回生卒業設計への評価がありました。
下写真の野村あゆみさんの作品は、全教員から評価が高かった「水と丘の公園」です。岡山市の北部の操車場跡を多様な世代が交流できる公園に転換する計画。浸水地域であるため洪水調整用の水面に向けて楕円形のスポーツ施設などが連なる計画案。大模型とパネル表現も充実していました。 ■作品が持つ「力」とは何か
次いで評価の高かった金セハン君の作品名称は、「過去からのメッセージ」です。
北朝鮮と韓国との間に広がる38度線の下には、現在見つかっただけでも7本の地下トンネルが北側から掘られているという。彼の計画は、南北国境がなくなり統一されるであろう将来には、DMZと呼ばれる非武装地帯の地下トンネルの上に、過去の記憶としてのモニュメントとなる平和公園を作ろうというもの。公園は花の帯の公園で38度線を跨いで作り、その平和公園の70m下には、見つかった地下トンネルが走っているというものです。
この作品は、平和を満喫している私たち日本人にとっては、衝撃的とも思える内容で、隣国での厳しい国際社会の現実を突きつけられたようでした。 写真:平和公園の模型。黒い地層の下に地下トンネルが
セハン君の作品は、悲惨な同族戦争の歴史を冷静に見直し、同じ民族が北と南に分かれて戦っていても、38度線の両側には同じ季節が到来し、同じ花が咲いているじゃないか、ということを訪れた人々に想起させ、過去の悲惨な歴史への反省を誘う公園にするものでした。
これらの卒制について佐々木先生より、とても貴重な言葉がありました。
それは作品が持つ「力」とは何か、というものです。
学生たちが取り組むテーマやコンセプト、創造したかたち、そのかたちのリアリティ・・・それらすべてで作品は評価されます。しかし、一番重要なことは「目に見えない感動を与えてくれるもの」だということです。それこそ、作品の内部から読み取られる「物語性」として、三次元の物理性から感じられる表現力になければならない、ということでした。
悪条件の美学
今回の講義テーマ、悪条件の美学については、以前にも学生に好評だったテーマです。
以下の6つの作品を事例に講義いただきました。
1.投げ入れ堂・・・懸け造りの美学・・・地形の逆転利用:構造機能の最小限表現
2.エムシャー・パーク:・・プロセス顕現の美学・・・都市づくりへの逆転:生態的変容の活用
3.仙遊島公園:・・近代遺産再生の美学・・・施設利用の逆転:自然と対比した時間の痕跡活用
4.セントラル・パーク・・・ランドスケープアーバニズムの美学・・・地形の逆転活用
5.ペイリー・パーク・・・アウトドア・リビングの美学・・・狭さの逆転:身体感覚の復権
6.モエレ沼公園・・・アースワークの美学・・・土地利用の逆転:大地感覚の復権
ここで印象的だったのは、アウトドアリビング(戸外室空間)のところで、引用されたルイス・カーンの言葉でした。
「ある場所に集い、そこで何かを分かち合い、共に時を過ごす場合に重要なのは、空間の共有感覚である。・・・それは“気配”のようなものとして感じられる空間として用意されなければならない。」
また、ティータイムの休憩中には、佐々木先生が現在関わられている居住地の藤井寺まちづくり協議会の活動の様子について、お話を聞きました。
その後、学生たちが現在製作中の東北震災復興コンペの図面についてもコメントをいただき、
本年最初の白雨館ゼミが終了しました。 2011年度卒業院生と4回生たちとは最後の白雨館ゼミ風景です。
3回生ゼミ生も参加しています。
(報告:TA/馬河)
■2011年度卒業設計・制作の評価
まずその前に、今年のランドスケープデザインコース4回生卒業設計への評価がありました。
下写真の野村あゆみさんの作品は、全教員から評価が高かった「水と丘の公園」です。岡山市の北部の操車場跡を多様な世代が交流できる公園に転換する計画。浸水地域であるため洪水調整用の水面に向けて楕円形のスポーツ施設などが連なる計画案。大模型とパネル表現も充実していました。
次いで評価の高かった金セハン君の作品名称は、「過去からのメッセージ」です。
北朝鮮と韓国との間に広がる38度線の下には、現在見つかっただけでも7本の地下トンネルが北側から掘られているという。彼の計画は、南北国境がなくなり統一されるであろう将来には、DMZと呼ばれる非武装地帯の地下トンネルの上に、過去の記憶としてのモニュメントとなる平和公園を作ろうというもの。公園は花の帯の公園で38度線を跨いで作り、その平和公園の70m下には、見つかった地下トンネルが走っているというものです。
この作品は、平和を満喫している私たち日本人にとっては、衝撃的とも思える内容で、隣国での厳しい国際社会の現実を突きつけられたようでした。
セハン君の作品は、悲惨な同族戦争の歴史を冷静に見直し、同じ民族が北と南に分かれて戦っていても、38度線の両側には同じ季節が到来し、同じ花が咲いているじゃないか、ということを訪れた人々に想起させ、過去の悲惨な歴史への反省を誘う公園にするものでした。
これらの卒制について佐々木先生より、とても貴重な言葉がありました。
それは作品が持つ「力」とは何か、というものです。
学生たちが取り組むテーマやコンセプト、創造したかたち、そのかたちのリアリティ・・・それらすべてで作品は評価されます。しかし、一番重要なことは「目に見えない感動を与えてくれるもの」だということです。それこそ、作品の内部から読み取られる「物語性」として、三次元の物理性から感じられる表現力になければならない、ということでした。
悪条件の美学
今回の講義テーマ、悪条件の美学については、以前にも学生に好評だったテーマです。
以下の6つの作品を事例に講義いただきました。
1.投げ入れ堂・・・懸け造りの美学・・・地形の逆転利用:構造機能の最小限表現
2.エムシャー・パーク:・・プロセス顕現の美学・・・都市づくりへの逆転:生態的変容の活用
3.仙遊島公園:・・近代遺産再生の美学・・・施設利用の逆転:自然と対比した時間の痕跡活用
4.セントラル・パーク・・・ランドスケープアーバニズムの美学・・・地形の逆転活用
5.ペイリー・パーク・・・アウトドア・リビングの美学・・・狭さの逆転:身体感覚の復権
6.モエレ沼公園・・・アースワークの美学・・・土地利用の逆転:大地感覚の復権
ここで印象的だったのは、アウトドアリビング(戸外室空間)のところで、引用されたルイス・カーンの言葉でした。
「ある場所に集い、そこで何かを分かち合い、共に時を過ごす場合に重要なのは、空間の共有感覚である。・・・それは“気配”のようなものとして感じられる空間として用意されなければならない。」
また、ティータイムの休憩中には、佐々木先生が現在関わられている居住地の藤井寺まちづくり協議会の活動の様子について、お話を聞きました。
その後、学生たちが現在製作中の東北震災復興コンペの図面についてもコメントをいただき、
本年最初の白雨館ゼミが終了しました。
3回生ゼミ生も参加しています。
(報告:TA/馬河)
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by landscape_lab2006
| 2012-02-12 18:30
| 白雨館ゼミ